ご質問に答えて…「閃輝暗点」と「光視症」
2014年06月10日 掲載
今年成人式を迎えられたNさんが不安そうなご様子で受診されました。
N子さん: 突然目の前にチラチラした光が見えてしばらく部分的に物が見えなくなったのですが。
平 田: チラチラしたという光は、のこぎりの刃型のようなギザギザした形(図1)で最初小さな点から始まりだんだん広がっていき、15分位したら消えて元通りに見えるようになったのではないですか?またその後頭痛は起こりませんでしたか?
N子さん: はい。15分位でよくなったのですが頭が重くてしばらく気分が悪くなりました。
平 田: 閃輝暗点の発作ですね。寝不足などでお疲れではありませんか?
N子さん: 最近ストレスがあって夜眠れないのです。
平 田: 眼球は何も問題はありません。閃輝暗点が起こる原因は、頭の脳の物を見る中枢といわれる部分の血管が収縮し、一時的に血の流れが変化するためと考えられています。20才前後の若い方に起こる若年タイプの場合はご家族の中に同じ経験を持つ方がおられたり、発作が起こった時に片頭痛を伴なうことが多いのですが、55才前後に起こる中年タイプではそのようなことはあまり関係しません。
N子さん: また起こるのでしょうか?予防することは出来ませんか?
平 田: 閃輝暗点は 周期的に起こるのが一般的です。ただし、回数は月に1~2度のこともあれば、年に1回のこともあります。回数が多い場合は、血管拡張剤を使うこともありま すが、まず誘因となるストレスや不眠、過労を防ぐことが大切です。もし、また起こったら心配せず、横になって出来たら30分位昼寝をして下さい。そうすれば発作はすぐに治ります。
N子さん: 詳しい検査は必要ないのですか?
平 田: 若い方で片頭痛を伴う典型的な若年タイプの場合は、年齢と共に回数も減りその内にほとんど起こらなくなるのが普通です。中年タイプの場合は、一般的に中性脂肪が非常に多い方などに起こることもあるのですが、まれに脳梗塞、脳動静脈奇形、脳腫瘍などの可能性もありますので、確実に診断する必要がある時には脳血管造影検査や MRI検査を施行します。
光視症について
10数分間続く閃輝暗点と異なり、暗い部屋で顔を振った時などに視野の周辺でピカッっとした光が見えたり、光の玉のようなものが瞬間的に流れるように感じられることがあります。これは脳腫瘍とは関係無く眼球の網膜が硝子体に引っ張られる物理的な刺激が原因なのです。本来、硝子体は眼球の中に十分満たされているのですが(図2)、硝子体が変性し萎縮すると後部硝子体剥離が起こり、網膜との間がはがれて水に置きかわります(図3)。顔を振った時に硝子体が揺れて一部癒着している部分で網膜を引っ張るためにそれを光として感じてしまうのです。
癒着が取れれば光は感じなくなります。まれに網膜が引っ張られるために網膜裂孔が出来て網膜剥離になることがありますので、光視症に続いて黒い点がたくさん飛んで見えたり、視野の中に部分的に見えない所が現れたりしたら、早めに当院で眼底の精密検査を受けて下さい。