「緑内障」最近の知見
2017年04月13日 掲載
緑内障には他の病気から引き起こされた続発性緑内障や、先天性の緑内障等も一部ありますが、多くは原発性の開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障と呼ばれるものです。このうち開放隅角緑内障のなかでも眼圧が20mmHg以下のものを正常眼圧緑内障と呼び、緑内障全体の約90%を占めています。自覚症状が乏しい為に発見が遅れ、視力障害を起こしやすいタイプがこの「正常眼圧緑内障」です。以下はこれを中心に説明致します。
◎有病率の変化
緑内障は日本人の中途失明原因として最も多く、原因となる目の病気の中で約四分の一を占めるようになりました。緑内障の有病率は年齢とともに増加してきます。
平成12~13年に行われた多治見スタディ(疫学調査)によりますと、有病率は40歳台で2.2%、50歳台で2.9%、60歳台で6.3%と上昇し70歳台では10.5%、80歳以上は11.4%になると報告されています。70歳以上の方の10人に1人は緑内障という事になります。これを40歳以上全体としてみると5%となるので、最近まで40歳以上の方の20人に1人は緑内障と言われてきました。しかしこの調査が行われた平成12年度の総人口は1億2693万人、65歳以上の人口は2204万人で当時の総人口に占める割合は約17.4%でした。
その後高齢化が急速に進み平成28年度の総人口は1億2693万人で変わっていませんが、65歳以上の人口は3459万人となっており、総人口に占める65歳以上の割合は約27%と急増しております。このため緑内障の40歳以上の方の有病率は、今まで言われてきた20人に1人ではなく、今や40歳以上の方全体では10数人に1人は、すでに緑内障と類推されます。しかしご自身が緑内障と自覚されておられる方は、この内せいぜい1割程度に過ぎません。そのため特に目に症状を感じなくても、40歳以降は5年に一回は目の検査を受けて頂く「節目健診」の制度化の必要性が叫ばれています。
◎検査の進歩
緑内障で最も大切な事は早期発見と、治療効果を見る為の継続的な経過観察です。その為に用いられる検査としては、眼圧検査、眼底カメラ等の眼底検査、視野検査が従来から一般的に行われてきました。眼圧が点眼剤治療等でかなり下がっていても、緑内障の進行が食い止められているのかを見る為には、今までは視野検査の結果が判定材料として重視されてきました。勿論現在も視野検査の経過を見る事の重要性に変わりは有りません。
しかし最近画期的な検査方法が加わりました。「OCT検査」(眼底三次元画像解析装置)と呼ばれるもので、赤外光を用いて眼底の視神経乳頭の変化や網膜視神経層の厚みの変化を直接他覚的に判定出来るようになったのです。この「OCT検査」により、緑内障を示唆する異常が有りながらも、通常の視野検査ではまだ視野欠損が認められない症例を「前視野緑内障」(preperimetric glaucoma)と称するようになりました。最近の知見では視野検査で異常が発見された時は、5~6割以上の方が既に網膜に障害を受けている事が分かってきたのです。
今では緑内障の早期発見や経過観察する上で、「OCT検査」は無くてはならない重要な検査となっています。平田眼科では眼圧、眼底カメラ、精密視野検査に加えて必要な間隔で「OCT検査」を必ず行うようにしております。総合的な検査結果は診察時に医師が説明し、必要な場合は点眼剤処方や指導を行っておりますので、ご心配のある方は当院診察時に医師にご相談下さい。