マイボーム腺機能不全
2016年07月14日 掲載
マイボーム腺は(図1)のように、まぶたのまつ毛の少し奥にある脂の分泌腺です。数は約片眼の上まぶたで50本、下まぶたで25本位です(図2)。通常は脂を分泌しており、その脂が目の表面全体を覆い、涙が万遍なく角膜上に広がるようにし、かつ涙の蒸発を抑制する働きをしています。その他にも潤滑油作用でまばたきの都度、まぶたの裏の摩擦を減らしたり、まぶたの縁で脂がバリアーとなって、目の中の涙が皮膚の方に流れ出るのを防ぐ作用もしています。機能不全には脂の分泌減少型と、分泌増加型(図3)がありますが、殆どが分泌減少型で、脂の排出力が低下したり、開口部が変形したり閉塞したりしています。
その為に腺の内部や開口部に溜まった脂質が図の様に観察されます(図4と5)。マイボーム腺が変質すると瞼の縁が硬くなり、まばたきの都度目の表面を擦る為に、角膜に傷がついてしまう事もあります。(リッドワイパー症状)
自覚症状としては、目がコロコロする、乾く、何かクシャクシャする、メヤニがいつも付いてる感じがするなど様々な訴えがあります。バリアー作用の障害で涙が皮膚側へにじみ出る為に、目の縁がいつもベトベトして涙っぽいと言われる事も度々あります。
有病率は40歳以上になると徐々に増えて、60歳以上の方では、人口の約半数の方に認められるとも言われています。今まで単なるドライアイや涙目と思っておられた方の中でも、実際はかなりの症例でマイボーム腺機能不全が関与している事が考えられます。原因の多くは加齢による変化で、分泌機能の低下に加えて、分泌腺の出口が狭くなったり閉塞する為ですが、若年者の場合は分泌腺内の菌の感染による分泌機能低下や、アイメイクによる開口部の閉鎖によるものが多いと考えられています。
治療手段
① 温罨法
まぶたを温めることによって分泌腺内の固まっていた脂が柔らかくなり、開口部も開きやすくなります。蒸しタオルやホットアイマスクをまぶたの上に4~5分置き、その後清潔なコットンなどでまつ毛の根元を優しくふき取るようにします。
② まぶたのまつ毛の生え際近くの清拭(リッドハイジーン)
清潔な指先に、刺激の少ない専用のシャンプーを付けて、まぶたやまつ毛の生え際を優しく擦るように洗います。後は軽く水で洗い流します。
③ 圧出
これは眼科医が診察時に行います。分泌腺内の脂質を、器具を用いて排出させます。
①と②はご本人自身が少し練習すれば出来ますので、無理なく続けるようにしましょう。目の周りの皮膚は、他の部分の皮膚よりもデリケートなので、決して強く擦ったりしないように気を付けて下さい。また女性のアイメイクはマイボーム腺の開口部にかからないように注意して下さい。専用のホットアイマスクや刺激の少ないまぶた専用のシャンプーなどが有りますので、必要な時は当院受付でご相談下さい。