前視野緑内障
2016年12月28日 掲載
厚労省の調査で日本人の失明原因で多いのは、1位緑内障、2位糖尿病網膜症、3位網膜色素変性症、4位加齢黄斑変性となっています。一番多い緑内障の有病率は40歳以上の中高年者の17~20人に1人、80歳以上ですと9人に1人となっています。比率的には少なくても20代の方もいます。高度近視や血縁家族に緑内障患者さんがいる方は危険率が高くなります。
従来から緑内障の早期発見と点眼治療開始時期を決める為の検査としては、主として眼底カメラ、眼圧検査、前房隅角検査、視野検査等の経過を総合的に判断して診断されて来ました。特に視野が正常かそれとも異常が現れて来たかは、今でも非常に重要な判断材料とされています。最近この判断を助ける上での画期的な検査機器が登場しました。眼底三次元画像解析装置(OCT)とよばれるもので、赤外光を用いて眼底の視神経乳頭の変化や網膜視神経線維層の厚みの変化を正確に判定出来るようになったのです。これを用いた検査により、緑内障を示唆する異常がありながらも、通常の視野検査でまだ視野欠損を認めない状態を前視野緑内障(preperimetric glaucoma;PPG)と称することがあります。この状態には緑内障の前駆状態もしくは緑内障に類似した所見を示している正常眼もしくは他の疾患の一部が含まれると考えられ、原則的には無治療で慎重に経過観察されることもあります。しかし緑内障患者さんにおいて視野障害が現れた時点では、すでに5~6割以上の方が網膜に障害を受けている事が分かってきました。緑内障による視野異常は現時点では回復させる方法がなく、眼圧を点眼薬等で下降させることにより視野異常の進行を遅らせるのが現在の治療です。そのため理論的に、視野に異常が出る前のより網膜の障害が軽い状態から点眼治療を開始した方が、その患者さんの人生の生涯の視機能の質を維持する事が出来ると思われます。ただ高血圧の方が生涯降圧剤を内服するように、緑内障点眼薬も継続して使用しなければ治療効果は期待出来ません。ただ点眼薬にも当然一定の副作用はあり、また点眼薬を生涯使うとなると患者さんの金額的な負担も配慮もしないといけません。そのためいつから治療を開始するのかは、患者さんの各種検査結果の推移や年齢、ご自身の希望などを総合的に考慮し、医師と相談していく必要があります。
平田眼科では緑内障の早期発見の為に、特に前視野緑内障の検出に非常に有用なOCT検査を精密視野検査やその他の検査と併せて行っております。ドックや健診で乳頭陥凹と指摘された方は勿論、近視の強い方や、家族に緑内障患者さんがおられる方は特に早めの検査を受けるようにおすすめしています。