加齢黄斑変性
2015年06月23日 掲載
平成26年9月12日に神戸の先端医療センター病院で、世界で初めて人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作製された網膜シートが、実際にヒトの目に移植されて、大きな話題となりました。手術を受けられた患者さんの目の病気が「滲出型加齢黄斑変性」でしたので、この病気の名前が、さらに広く知られるようになりました。黄斑とは景色が写る目の奥にある網膜の、一番大切な中心部分のことを言います。この疾患はもともと欧米先進国に多くて、米国での中途失明原因の第一位になっています。日本でも近年高齢者人口の増加や、食文化の欧米化などで、患者数が急激に増えており、平田眼科においても同様です。女性より男性に多く、年齢と共に増えてきます。喫煙経験者に発症が多いとも言われています。
病態とタイプ
様々な病態がありますが主に2タイプに分類されます。
- 滲出型・・黄斑部の網膜の後にある脈絡膜から、非常に破れやすい新生血管が網膜側に伸びてきて、漏れ出た血液や血液成分が網膜下に貯留するため、網膜が浮腫状となり、機能が破壊されてしまいます。進行が早くて視力も急速に低下します。
- 萎縮型・・加齢と共に「ドルーゼン」と呼ばれる老廃物が網膜黄斑部のさらに後にたまると、網膜の細胞が栄養不足となり、網膜細胞が萎縮してしまうタイプです。
進行は遅く視力の低下も緩やかですが、経過によっては新生血管が発生することもあるので、定期的な検査は必要です。
自覚症状
変性が起こると次の様な症状がまず現れます。
- 変視症・・中心部分がゆがんで見えるようになる。
- 視力低下・・ぼやけて見えるようになる。
- 中心暗点・・見ようとする所が暗く欠けて見える。
検査
代表的な検査としては次の五つがあります。
- 視力検査
- 変視チェック(アムスラーチャート)
- 眼底検査と眼底カメラ
- OCT(光干渉断層計)
- 蛍光眼底造影
特にOCT(光干渉断層計)は最近非常に高機能で高精度なものが開発され、平田眼科では春日井と小牧の両院で導入されております。早期発見と治療効果判定に、最も有用な検査機器となっています。
老眼鏡を使用し片眼毎に中心の点を固視します。周囲のマス目のゆがみの有無を調べます。
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治療
滲出型には積極的な治療が行われます。
- 抗VEGF療法
眼球内に薬剤が注射されます。薬剤には血液成分が漏れやすい新生血管を成長させてしまうVEGF(血管内皮増殖因子)を抑える作用があります。今最も多く用いられ、効果が期待出来る療法となっています。通常月に一回、三か月連続で注射し、その後は薬剤の種類の違いや、症状の程度の変化によって、間隔が決められます。 - 光線力学的療法
光に反応する薬剤を体内に注射し、新生血管部に薬剤が到達した時に、レーザー光線を照射して活性化させ、新生血管のみに作用し閉塞させる療法です。繰り返し行われることもあります。 - レーザー光凝固術
生血管をレーザー光で焼き固める療法ですが、周囲の正常組織にもダメージがあるために、中心窩以外の新生血管の閉塞にのみ用いられます。
残念ながら話題のiPS細胞を用いた療法は、臨床的研究が始まったばかりで、実際に応用されるには、まだ相当先になると思われます。なお萎縮型に対しては新生血管が現れるまでは積極的療法は行われません。
予防
タバコは発症リスクを高めると言われていますので、禁煙を強くおすすめします。高血圧や高脂血症のコントロールも大切です。緑黄色野菜の継続的摂取や紫外線や有害青色光線に対しての、予防メガネの使用も勧められています。サプリメントとしては抗酸化作用のあるルテインやビタミンEとCが充分に含まれたものが良いでしょう。ご希望のある方には、当院で紹介しております。しかし何よりも大切なことは早期発見することです。前記の自覚症状がもし感じられたら勿論、高血圧、高脂血症、高血糖のある方や、目に何らかの不快感を感じるようになられた方は、早めに当院で検査を受けられることをおすすめします。
さらに詳しい情報は、「参天製薬 網膜疾患サポートサイト」をご覧ください。
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※本ページの画像及びQRコードは参天製薬資料を使用