結膜のアレルギー性疾患
2014年05月22日 掲載
私達の体は花粉・ホコリ・ダニなどの異物や細 菌・ウイルスなどの病原体が侵入すると自分の体を守るためそれらを分解除去したり無毒化するための抗体を作る免疫反応が働きます。これはとても大切な働き ですが、この反応が過剰となって自己を傷つけてしまうとアレルギー性疾患となってしまいます。目は直接外界に接しており絶えずいろいろなものが入りやすい ので、通常は涙で洗い流していますが、それでも過剰な免疫反応が起るとアレルギー性疾患となってしまいます。まぶたの裏側と白目の表面を結膜と言いますが そこに起るアレルギー性疾患の主なものは次のように分類されます。
① アレルギー性結膜炎
症状の発生時期により次の2つに大別されます
〇季節性アレルギー性結膜炎
いわゆる花粉症が代表的なもので2月~5月はスギおよびヒノキ、6月~8月はカモガヤ、8月~10月はブタクサおよびヨモギの花粉の飛散が認められます。本疾患患者の血清中の抗体陽性率はスギ花粉が82%、ブタクサやカモガヤは各々20%と報告されています。
〇通年性アレルギー性結膜炎
原因としてはダニやハウスダストの他ペットブームで室内飼育のネコの毛やハムスターが原因のこともあります。抗体陽性率はダニとハウスダストが各々40%と報告されています。
② 巨大乳頭結膜炎
上 のまぶたの裏にブツブツした直径0.3mm以上の乳頭がたくさん認められます。原因としてはコンタクトレンズや義眼の汚れや以前に目の手術を受けた方で糸 が残って飛び出している場合などに認められます。中でも数的にはソフトコンタクトレンズの汚れによる場合が極めて多く、ソフトコンタクトレンズ装用者の 15%、ハードコンタクトレンズ装用者の2%に認められるといわれます。ソフトコンタクトレンズが上にズレやすくなった方のほとんどに本症が認められま す。 巨大乳頭結膜炎
③ 春季カタル
上 のまぶたの裏に巨大乳頭結膜炎よりもさらに大きい石垣状の乳頭増殖が認められ重症例では黒目(角膜)にもキズ(潰瘍)が出来ます。比較的若年の10才前後 から発症し思春期をすぎると症状は軽快します。しかしアトピー性皮膚炎を合併している率が約70%と極めて多く白内障や網膜剥離などの合併症を生じること もあります。血清反応ではハウスダスト特にチリダニの陽性率が80%以上と報告されています。
④ アトピー性角結膜炎
アトピー性皮膚炎に合併して起こる慢性角結膜炎で春季カタルのような巨大な乳頭や角膜潰瘍などはありませんが、黒目(角膜)に小さなただれ(点状表層角膜症)や結膜の浮腫や小さな乳頭が認められます。また思春期を過ぎても症状が続きます。
⑤ 接触性皮膚結膜炎
化粧品や市販の目薬や目のいろいろな病気のために使われる目薬などでアレルギーが起こることがあります。まぶたの周囲の皮膚も充血したりただれることが多く、原因と考えられる化粧品や目薬の使用状況に応じて症状が変化することが特徴です。
厚生労働省の研究班の報告によれば成人の19%にアレルギー性結膜炎が認められるとされています。アレルギーの原因物質がハッキリと分かれば出来るだけそ の物質に接しないようにすればよいわけですが、実際にはよく分からないことの方が多いのです。また遺伝的には両親共アレルギーをもつ場合は50%、一方の みがもつ場合は30%の確率でその子供もアレルギーを持つと言われます。
結膜のアレルギー性疾患の治療薬としては一般的に抗アレルギー点眼剤と症状に応じてステロイド点眼剤や眼軟膏が使われます。ステロイド剤の使用は眼圧やヘルペス感染の有無等をチェックしながら慎重に用いられます。
花粉症やアレルギー性鼻炎の治療等で目もかゆいからと自己判断で点眼薬を使用したりせず、必ず平田眼科で眼科的検査を受けて眼科専門医の指導のもとに治療を受けるようにしましょう。